今回、私は特別養護老人ホームおよび高齢者在宅サービスセンターである白金の森で実習を受けさせていただいた。白金の森は、区立の施設であり、緑や自然に囲まれた環境にあり、また看護師が23時間体制で勤務しているという特徴を持っている。私は、看護や介護に非常に興味を持っていたことから、本施設で実習を受けることを希望した。
まず1日目は、施設の簡単なオリエンテーションを受けた後、フロアー研修で2階のデイルームにおられる高齢の方々の話し相手や昼食介助を行った。話しかけてもなかなか返事してもらえなかったり、食事を勧めてもあまり食べられなかったりで、とまどったり困ったりした。しかし、食事介助をした高齢の方が「ありがとう」と言ってくれたときはとても嬉しかった。午後のミーティングで印象に残ったことは、苦しみしか経験せずに生きてきた人について、そういう人のために何ができるかということについてであった。私はそんな方に対し、深く同情し、何かをしてあげたいと思う。また、午後印象に残った高齢の方からの言葉は「元気そうで何より」や「大変なことを乗り越えて一人前になれる。楽な仕事なんてない」であった。特に後者には励まされ、その日の疲れは一気に飛んでいった。自分のやっていることにやりがいを感じ、爽やかなすっとした気分になれた。
2日目は、3階のフロアー研修だったが、食後の口腔ケアが、なかなか口を開いてもらえなくて難しかった。また、昔ダンスをしていたという方とたくさんお話ができた。最後にある方から「ご苦労様」と言われて嬉しかった。
3日目は、同じく3階のフロアー研修で、アルツハイマー型認知症の方とお話をした。この方は何度も同じことを繰り返し話した。また、私についてきてしまうことが多く、最後は介護員がその方を私から引き離した。後から生活相談員に聞いたところ、そのような状況では、ひたすら安心させてあげることしかできないらしい。難しいことだが、よく起こることだそうだ。中間報告会では、私は命と幸せについて自分の考えを述べた。命とは親からいただいたものなので、大切にしなければいけない。親には親がいて、その親にもまた親がいる。一番の源の親を科学者村上和雄は「サムシング・グレート」と呼ぶ。親は子供に幸せになってほしいと思って当然だから、サムシング・グレートも私たちに幸せになってほしいと願っている。その幸せとは何かというと、村上和雄と仏教かのダライ・ラマが対談をしたとき、村上はこんな質問をした。「あなたは全生涯の中でどんなときがいちばん幸せでしたか」と。すると、ダライ・ラマはこう答えた。”Right now(今この瞬間)”と。つまり、今この瞬間を幸せだと思えるのが、本当の幸せなのではないかと私は思った。しかし、高齢の方々の中で、「今」を幸せと思える方はそんなに多くはないのではという印象を受けた。それは体に不自由が生じたり、機能が低下したり、認知症になったり、目すら開くことが困難であったりで、何かと苦しみを背負っている方が多いからである。そんな方々に本当に大切なのはポジティブシンキングや感謝の気持ちかなと思った。苦しみの中で何とか前向きに希望を持っていただけたらと思う。
4日目は、デイサービスという施設に宿泊されない方のためのプログラムで、朝バスで迎えに行き、自己紹介のときは私の得意な空手の形を演じ、おりがみで一緒にアサガオを作り、午後は体操やハワイアンダンスをしたり、カラオケをしたりした。ゲームをする時間もあったが、一人ゲームに参加しない方がいた。「嫌々参加してもしょうがないじゃない」と言っていた。だがその方も帰りバスで家まで送ったときには、「ありがとうございました」と言っていた。
5日目は、同じくデイサービスで、朝バスで迎えに行き、自己紹介のとき私の描いた絵を見せたり、機能とは違う形を演じたりした。ある方が「感動した」「もっと絵を見せてください」と言ってくれて、とても嬉しかった。午前はおりがみでアサガオを作った。午後は昨日の続きのハワイアンダンスを踊ったり、早口言葉を練習したり、カラオケを歌ったりした。反省会では、老いについて自分の考えを述べた。高齢の方々を取り巻く環境というのはとても大切なものだと思う。たとえば医師、看護師、介護士、家族、施設内の友人、施設外の友人など…また施設も重要で、デイルームやデイサービス、自然など…なるべく高齢の方々が気持ちよく生きられるような環境を整えることが大事だと思う。人は年老いても、やはり人に愛されなければ生きていけない。だから施設内で高齢の方同士友達になったり、施設外に大切な家族や友人をもつことは本当に大事なことだと思う。そして最後死ぬとき、振り返ってみて「すばらしい人生だったな」と思えるように、心穏やかに愛する人に囲まれて死を迎えられるように努力を尽くすのがベストだと思う。そのために一日一日を大切に生きることが高齢の方々にも今の若い方々にも重要なのではないかと思った。
最後に、私が実習を通して、一番学んだ、人とふれあうことについて述べて、まとめとしたいと思う。高齢の方々と話をしていると、反応があまり返ってこなかったり、うまくコミュニケーションをとれなかったりすることもたくさんある。しかし、それでもコミュニケーションをとろうとすることの重要性を学んだ。昔、英語の先生が言っていたように”Bad communication is better than no communiation(下手で不器用なコミュニケーションでも、コミュニケーションをとらないよりはよほど良い)”である。言葉をうまく発せない方でも、心の中では話しかけてもらえて嬉しいことだってある。話せる方とはたくさん話をし多くのことを学べてよかった。介護士や看護師の方々、生活相談員の方々、その他の白金の森で勤務している方々、5日間本当にお世話になり、ありがとうございました。
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