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難多き青春


第二章 はじめからやり直す

物事はいつも最初からいいとは限らない
緊張したり、自意識過剰になったり、恥ずかしくなる
でも、辛抱しなければ、待たなければ
はじめからやり直すことはできる、悪い思い出は消える

 

 もしかしたら私の悪い思いでは消えないかもしれないけど、一時的に忘れられる。

 今日は私の二日目の学校の日だった。私は学校が憂鬱だった。一日中一人ぼっちになるかと思ったから。でも、一日に何が起こるかなんて予測がつかない。私は昨日のことを思い、笑顔になった。不幸はいつまでも続くようだけど、ある日、その不幸は忘れられて幸せに置き換わることがある。まあ抽象的な話はこれぐらいでいいでしょう。今日何が起きたかもっと具体的に話したいわ…。

 

 「こんにちは、アイリーン。」
 バーンズ先生だった。彼女は私の担任の先生である。

 「こんにちは、バーンズ先生。」と私は礼儀正しく返事した。バーンズ先生は何も知らない。彼女は不注意な上に無責任だ。彼女は私をただクラスに紹介したら、私は新しいメンバーになって皆私のことをスムーズに受け入れてくれると思った。私が恥ずかしかったり傷ついたりしないものだと思った。私の中に嫌悪感や怒りなどの感情はないと思った。私は彼女に「クビになれ!」と叫びたかった。そしたら私は強制的な学校をやめさせられて、私の問題は解決する。すなわち私はこのひどい学校に一歩も足を踏み入れなくてよくなる。
 「それで、学校はどうですか?」
 「あー素晴らしいです。」と私は嘘をついた。私って本当に二面性があるな。
 「それは聞けて嬉しいです。あなたはこの学校でとても歓迎されているみたいですね。」

 バーンズ先生は温かく私に微笑みかけて、どこかへ歩いていった。私はにがにがしく彼女の後を見つめた。『歓迎されている?ふん!』誰も私のこと歓迎してくれていない。私が象であったとしても、誰も私のこと気付かなかっただろう。

 でも、もうそんなに気にしなくなった。それは私が友達は必要ないものだと決めつけたからである。友達なしでも生きていける。もちろん、そうとも。私は慣れない廊下を自信たっぷりで堂々と歩いてみせた。まるで何も私を壊すことができないかのように。たとえそれが寂しさであっても。

 私はモンスターだらけのひどい教室にいつもより少し遅く入った。先生が来るのをそれほど長く待たなくていいように。それでも、ベルが鳴るまであと五分もある。しかも理科のワランス先生はあまり規則的じゃない。昨日は五分遅れで来た。そうすると、十分もこの最悪なうるさい教室に一人で座っていることになる。もう、どれだけこの学校が嫌いなことか!

 私の隣の男の子は休みだった。一瞬、何だか残念に思ったが、すぐにそれは間違いだということに気づいた。私は彼を必要としない。私は友達を必要としない。私はこの学校の人を誰一人として必要としていない。


 私の隣の女の子は本を読んでいた。私も本を持ってくれば良かったと思った。頭の中で明日一冊持ってくるように自分に言った。私は、みんなが昨日見たテレビ番組について話したり、有名でハンサムな俳優やアイドルについてキャーキャー騒いだり、それかもっとひどければ、自分たちの恋人についてのろけたりして時間を無駄にしている間に、たくさんの時間を読書に費やせることを幸運に思った。私はただみんなのことを軽蔑と嘲笑で満ちた視線で見るから。

 私は頭を腕の中にうずめて、眠ろうとした。しかし、教室があまりにうるさくて無理だった。私はとても迷惑そうな顔をして辺りを見回した。この人たちは一分間も静かにしてられないのか?

 しかし、私の苛立ちはすぐにうらやましい気持ちに変わった。私はクラスの他の子供達がただ一緒にいるだけで本当に楽しそうにしているのを見た。ただ一緒にいるだけで…。

 私は休み中に買ったお土産を交換する人たちを見た。「わぁ、きれいなバッグ!これだけのビーズと羽がついていて―気に入ったわ!本当にありがとう。どこで買ったの?」とある女の子が聞いた。「バーモントよ。スキーに行ったの。」ともう一人の女の子が答えた。「いいなぁ。私は春休みずっと家にいたわ。でも夏休みの後は絶対何か持ってくるね?ありがとうね。」

 私は他にもいくつか会話を聞いた。みんな自分たちの最近の出来事、経験、趣味や考えを語り合っていた。まぁみんなが話していたわけではない。カードを使ってトリックをしてみせてる人もいれば、黒板に面白いことを書いたり、ボールで遊んでいる人もいた。みんなふざけ合って笑っていた。私は私以外のみんなが幸せな気がした。私のように一人でいる人も中にはいたけど、でも何かしていた。それに私とは違って、この学年の人たちを知っていて、きっと一人や二人は友達がいるのだろう。今は一人でいても。私は自分にとっては悪夢のような幸せいっぱいの教室を見回し、とても悲しくなった。

 この教室の人たちは学校生活からこれ以上のものを求められないだろう。彼らは楽しい友達のグループに含まれている。私がどれだけそのグループに入れてもらいたかったか!一時的にでも入れられたら素晴らしいだろう。永遠だったら完璧だ。そしたら毎日一人でいなくていいし―

 私はうなった。また友達を欲しがってしまった。そうすることで自分を余計みじめにしていることを認識しなければ。グリニッチでは、私は絶対みんなに含まれていた。絶対忠実に友達として扱われていた。その時私は永遠のメンバーかと思った。でも、その後父が転勤して私は新しい学校に来た。今の私を見てごらん。無視されて、放置されて、昨日与えられた教室でのこのうっとうしい席から動くことができない。友達を作るなんて無理だ。友達をキープするのはさらに無理だ。それが悲しい真実。

 『私に友達は必要ないものだ。友達なしでも生きていける強さを持っている。友達なんかいらない、友達なんかいらない、友達なんかいらない。』私は自分の頭の中で繰り返した。これ以上、素晴らしそうに見えて実は結構バカっぽい場面をもう見なくていいように目をぎゅっと閉じながら。私はその言葉を、ワランス先生が来るまで何度も何度も繰り返した。

 昼食の時間になると、私はずっとしゃべっていなかったので、唇同士がくっついた感じがした。私は図書館へ行って、昼食を抜くことにした。結構疲れていて、あまりお腹が空いていなかった。そんなに朝エネルギー使ったわけでもないけど。

 私はふらふらと図書館へ入っていった。私は詩の棚の中で、いい詩の本を探すことにした。ご存知のように、詩は私のこの世で一番好きなものの一つである。私は詩を書くのと同じぐらい読むのも好きである。詩だけが私の必要とする友達だ。

 その棚に辿り着いた時、既に女の子がそこに立っているのにびっくりした。私はあの短くて栗みたいに茶色い髪を思い出した時、思わず息をのんだ。彼女は教室で私の隣に座っている女の子だった。私は逃げ去ろうかと思ったけど、やっぱりそうしないことにした。きっと心のどこかでは、まだ友達を作りたいという気持ちが残っていたのだろう。そして私はここにいることに決めてよかったと思う。

 「こんにちは、アイリーン。」と女の子は私を見たときに話しかけてくれた。
 「こんにちは―」私は彼女の名前を思い出せなかった。
 「私の名前はキャリー。」と女の子はフレンドリーな声で言った。「キャリー・ハミルトン。あなたに会えて光栄ですわ。」
 「私も会えて嬉しい。」私は彼女が「またね」と言って他の友達を探しに行くかと思った。しかし、驚いたことに彼女は話を続けた。
 「もっと前に話しかけられなくてごめんね。ちょっと恥ずかしがっちゃったみたいで。」

 『恥ずかしがっていたの?』私には信じられなかった。
 「あ、うん、まぁ私もちょっと恥ずかしがっちゃったみたい。学校に転校するのは初めてだから。」と私は答えた。言葉は私が想像できるよりもはるかにスムーズに出てきた。

 「私も二か月前に来たから気持ちは分かるわ。でも心配しないで、すぐに慣れてくるから。」
 私は緊張がほぐれてきた。丸一日学校で寂しい思いをした後では、友達を持つことがどんなに嬉しいことなのかすっかり忘れてしまっていた。

 私は棚から三冊詩の本を取り出した。

 「結構詩好きでしょ?」とキャリーが言った。
 「うん。」と私は答えた。「キャリーは好き?」
 「詩は私の人生みたいなものよ。」

 「好きな食べ物は何?」と私は聞いた。
 「梅干し。」
 「えー、同じ!」

 信じられなかった。私は今までに梅干しはおろか詩が好きな人に出会ったことがなかった。多くの場合、私の友達は、詩はつまらなくて、梅干しは気持ち悪いと言う。でもキャリーはそれが好きなんだ!私は非常に嬉しかった。

 「好きな動物は?」とキャリーは聞いた。
 「くま。」
 「私も!パンダも好きだけど。」
 「パンダは本当にかわいい。」

 私達は、たくさん共通点を持っていた。もちろん、いくつかは違う点もあったけど。私は真っ直ぐな茶色みがかった金髪で、キャリーは短いこげ茶色だった。キャリーは二人の弟と一人の妹がいたが、私は一人もいなかった。キャリーはサンフランシスコに住んでいたが、私はコネチカットから来た。

 あっという間にベルが鳴った。昼休みは終わった。あと十五分長くてもいいなという感じだった。私達は教室へ急いだ。キャリーと出会えたことは私の人生を変えたことでしょう。

 後でその日に、家にとてもいい気分で帰って、郵便箱を開けた。二つの手紙があった。一つはお父さん宛で、二つ目は―やった!私宛だ!

 コネチカットの親友の一人からだった。

 私は父の手紙をリビングのテーブルにぽいっと投げて、自分の部屋へ駆け上がった。私はベッドに座り、封筒を開けた。文字を自分の目の中に飛びつかせた。

アイリーンへ

 やっほぅ、どうしてる?もっと前に手紙書いてなくてごめんね。あんまり時間がなかったの。

 学校はいつもと同じだよ。まぁアイリーンがいないからちょっと違うかもしれないけど。でも、毎年のように学校の始まりは混沌としていてヒステリーっぽかったよ。ケリーがみんなの注目を集めていて、アナベルはアフリカへの旅行について自慢していて、コリーンは偉そうにふるまっているよ。二ナは冗談を言っていて(あんまり面白くないけど)、当然のことながら背の高い集団は教室の後ろの方でたむろっている。ユキはいつも通り皆に優しくて、バーブラはすごく頭良くて綺麗。いやぁ、あの子はうらやましい。今年はメリリンが私のクラスにいるんだ。私が彼女と友達になるなんて誰が予測できてことでしょう?担任の先生はハッスル先生。あんまり知らないけど、面白そうな人だよ。結構自分のクラスに満足しています。

 問題は勉強なんだよね。アイリーンがいて教えてもらえたら嬉しかったのにな。私にアイリーンの脳の半分を置いていってくれたら良かったのにな。今年はうまくいくようにと思ったんだけど、ノートの文字や数字を見ているうちに本当に眠くなって…そのうち深い気持ちいい眠りにつくのよね(ため息)。私がひどい成績をとるのも無理ないわ。

 母はやっぱり病気じゃなかった。彼女は元気に過ごしていて、私もなの。アイリーンにこんにちはって言っておいてって言ってたよ。ちょっとくさい話かもしれないけど、私が心配している時に素晴らしい友達でいてくれたことに本当に感謝してるよ。アイリーンはまだ私の親友だからね。アイリーンが近くにいないのはつらいけど、私は大丈夫だから、心配しないでね。

 ところでアイリーンの方は学校どう?誰が新しい友達や先生なの?部活やチームに入った?学校での写真とか交換できるかもね。

 あ、そういえば、コンテストのために絵を描いてるって言ってたの覚えてる?私、三位に入賞したよ。きっと来年もっと頑張れば優勝狙えると思うな(学校のこととか忘れれば)。

 カリフォルニアを満喫してくれてるといいな。カリフォルニアねぇ。本当に住むのにいい場所だよね。私のイメージでは、パラダイスみたい。暑くてまばゆい太陽の下で、でっかいビーチで水着を着て、フリスビーやビーチバレーをして、フライドポテトを食べて、日焼けして…そんなに太平洋の近くに住んでるなんて信じられない。私の家は大西洋に面しているわ。前は私達の家は四ブロックしか離れてなかったのに。今は私の家からアイリーンの家まで歩くのは大冒険になるわね。

 風邪ひかないように。健康でいてね。時々休むんだよ?それに気をつけな。ナンパしてくるカリフォルニアの男たちに。カッコイイ男とは私がその人が安全だというまでは付き合っちゃだめよ(私ってなんていい友達なんだろう)。なんて冗談だよ。

 本当にアイリーンがいなくて寂しい!絶対また会うよね。今一番大切なことは互いのことを忘れないように書き続けること。きっと忙しいとは思うけど、早めに返事してもらえることを期待しています。

ケイティー・ヒルトンより

P.S.私はいつもアイリーンの味方だってこと忘れないでね。

 私はそっと笑顔になったが、前の学校の思い出が頭の中を走っていて少し悲しかった。つまり私の前の学校の親友は私のことを忘れてはいなかったんだ。大きな塊が喉に生じた。友情は私が思っていた以上に強いものなのかもしれない。




 皆、人生いい時もあれば悪い時もある。だからあきらめないで、どんなに絶望的な状況になったとしても。

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